病気に立ち向かう心

法遍寺信徒 Y.Y

私は主人に勧められ、平成22年に日蓮正宗へ入信しました。最初の頃は、この信仰に対して疑いがあるというわけではありませんでしたが、お寺での活動を疎ましく思った時期もありました。それでも一生懸命お寺のお手伝いをする主人に、なんとなく付いて行く度に、信徒の皆さんに温かくしていただき、少しずつですが、お寺へ参詣する頻度も増え、日蓮大聖人様の仏法を学ばせていただきました。

入信してから2年ほどたった頃の秋、喉に違和感を覚えていました。
過去にも同じような症状が出たことがありましたが当時通っていた鍼灸医の治療を受け、すっかり良くなりました。診断は精神的なものからくる梅核気だろうとのことでした。その時の経験から今回も鍼治療を受けました。しかし違和感は続いたままで、仕事の忙しさもあり、そのまま放置しておりました。

そんな折に静岡県にある日蓮正宗の末寺のご信徒Tさんが、法遍寺の御住職を訪ねておいでで、たまたま居合わせた私に、いろいろなお話をしてくださいました。Tさんは驚いたことに癌に侵されており、その告知の瞬間、「罪障消滅のチャンスだ!」と受け止めたそうです。私はその話を聞いた時、大変な衝撃を受けました。なんて信心の強い方だろう。私が同じ立場になったらとてもそんなふうには受け止められない、と思いました。
Tさんにお会いしたのをきっかけに、私はお寺のお手伝いを以前より積極的にさせていただくようになり、お寺へ行くことが毎回楽しみになっておりました。

しかしTさんのお話を伺ってから2ヶ月後、喉の違和感は強くなり、近所の耳鼻咽喉科に診てもらったところ、腫瘍のようなものが見つかり、すぐに公立病院で検査を受けました。
検査の結果、違和感の原因は咽頭癌だとわかりました。先生から悪性腫瘍と聞かされた時、私はとても落ち着いていて、「この病気には深い意味がある。きっと治る。私も罪障消滅をするんだ!そしてお寺のみんなと、また一緒に信心したい!」と強い気持ちを持てました。何故でしょうか、Tさんのお話を伺った時には、癌なんて病気になったらとても正気ではいられない、と思ったはずなのに、お寺に積極的に通い始めたこの2ヶ月間で、私の中で何か変化が起きたとしか言いようがありません。
自分でも不思議なくらい、自然に前向きになっていました。

肝心の癌との戦いは、地元の公立病院では処置が難しいとのことで、愛知県がんセンターで治療を受ける運びとなりました。
がんセンターで再度精密検査を受けると、私の癌はステージ4でした。主治医からは「手術での完治を目指すのであれば、声帯ごと切除しなくてはならない、つまりそれは声を失うということです。しかし、もし抗がん剤の投与で腫瘍の縮小が見られれば、放射線治療が有効な場合が多く、声帯を残すことが出来る」と告げられました。
一緒に説明を聞いていた私の父の顔は、絶望感しかありませんでした。ですが私は、前にも増して落ち着いていました。抗がん剤治療が効き、必ず放射線治療で根治する、声も残して癌も消滅する、その確信しかありませんでした。

そして法遍寺の御住職様に、これまでの経緯をご相談したところ、
「病魔は誰にも襲いかかります。でもこの信心をしていると、病気に立ち向かう気持ちが変わってきます。御本尊様を心から信じ、日蓮大聖人様の仰せのとおり信心を貫いて行けば、必ず乗り越えられます。」との有り難い御指導をいただきました。
私の病に対する前向きな気持ちや、必ず治るという強い確信は、少しずつですがお寺へ参詣し、素直な気持ちで御本尊様に手を合わせたことにより、私の中の命が変わっていったからだと理解しました。
さらに御住職様から『病によりて道心はおこり候』というタイトルの本をいただきました。この信心をしている様々な方の、病気を乗り越えた体験集です。病気は過去世からの罪障により起こり、立ち向かい乗り越えることによって、その罪障を消滅することが出来る、ということを学ばせていただきました。私も皆さんと同じように必ず乗り越えるんだという思いとともに、この信心は間違いない、御本尊様への確信をまた強く感じました。

後日静岡県にある総本山大石寺へ当病平癒の御祈念を願い出、入院治療に入る前に登山参詣をさせていただきました。
大石寺から戻り、御住職様に御報告すると、「必ず治ります。大船に乗った気持ちで大丈夫ですよ。」との心強く温かい言葉をいただき、改めて病気に打ち勝つ確信を持って、闘病生活に入りました。

私は大変な副作用の抗がん剤治療を2クール受け、喉を塞ぐような大きさだった腫瘍が画像ではほとんどわからなくなるまでになりました。抗がん剤が有効に働き、手術を回避することが出来ました。その後約2ヶ月・35回にわたる放射線治療が始まりました。抗がん剤も併用され、辛い副作用が回を追って強くなっていきます。途中心が折れそうになったり、何か判断に迫られる時は、御本尊様にお任せして、心の中でお題目を唱え続けていると、必ず良い方へと導いていただけます。先生や看護師さんの心のこもった対応に、私はなんて幸せな癌患者だろう、と毎日感動していました。お護りいただいている実感に感謝しながら、治療が中断することも無く、春から夏の終わりにかけて、約5ヶ月間の長い闘病生活を終え退院しました。

御住職様は私の入院中、毎日御祈念をしてくださっていたそうです。

放射線治療は、終えてからもしばらく口の中に炎症が残ります。すぐには検査も出来ません。癌はどうなったのか、不安になる日もありました。1ヶ月ほど経ち、やっと迎えた検査結果は、まだあやしい影がある、というものでした。
御住職様は「御会式までにきっと良くなりますよ。」と仰ってくださいました。
その後、自然な流れで次の検査日程が決まり、平成25年11月15日腫瘍は完全に消滅したと認められました。御会式の2日前のことでした。
晴々とした気持ちで御会式に参詣出来たことを今でもはっきりと憶えています。

その年は、総本山大石寺の御影堂大改修工事があり、平成25年12月、落慶記念法会に参詣させていただきました。
放射線治療の副作用である口の中の炎症は、薄皮をめくるような回復で、なかなか食事が難しく、退院してから4ヶ月間で10キロ痩せてしまったのですが、この参詣を境にどんどん回復し、私の8ヶ月間の療養をずっと待っていてくれた職場にも無事復帰出来ました。

こうして私は声と命を繋いでいただきました。
病気の体験は私の宝となりました。御本尊様の素晴らしさ、信心の大切さを、身を持って感じさせていただいたからです。
あの闘病生活は、確かに辛いものでありましたが、何度思い返しても愛おしい日々として蘇ります。生命力に満ち溢れた、素晴らしい体験です。記憶が薄れていくことが寂しいとさえ感じます。
今、主人とともに楽しく信心活動をさせていただき、毎日充実した日々を過ごしています。人と接することが苦手で内気だった性格が、人が好きになり、仕事にも活かされています。お寺の方々との交流もとても楽しいです。これは昔の私に比べたら驚くべき変化です。信仰によってこんなにも人は変われるんだ、と深い感謝の気持ちでいっぱいです。

そして治療後5年が経った平成30年9月、完全寛解を迎えることが出来ました。

この信心をしていると、病に限らず様々な困難に立ち向かう力が芽生えてきます。私も今回の体験によって、この先どんなことも乗り越えて行ける自信がつきました。
あの時、あのタイミングで、Tさんに出会っていなければ、病気から逃げずにしっかりと向き合うことは出来なかったでしょう。仏様が引き合わせてくれた深いご縁と受け止めています。私もご縁のある方へ、この経験を語ることで、日蓮大聖人様の仏法の大切さ、素晴らしさを伝えていきたいと思っております。

病気に苦しむ方、体調で悩んでおられる方がいらっしゃったら、ぜひお寺へ来てください。

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